AIで社内規程・就業規則を作る方法
AI社内規程作成支援とは、生成AIを使って就業規則や社内規程のたたき台を数分で作り、専門家の確認につなげる進め方のことです。
総務や人事を任されたばかりの人が最初にぶつかる壁が、まさにこの「規程のたたき台づくり」です。ひな形を探しても自社に合わず、社労士に頼む予算もない。この記事では、私自身がClaudeやChatGPTで文書のたたき台を作ってきた経験も交えながら、具体的な手順と落とし穴を整理します。
なぜ「規程づくり」はAIと相性がいいのか

規程整備がしんどいのは「白紙からの第一稿」が重いからです。ここを生成AIに任せると、作業の負担が一気に軽くなります。
Web制作会社BoostXの記事によると、規程整備が後回しになる一番の理由は「何をどう書き始めればいいか分からない」というつまずきにあるといいます(BoostX「就業規則・社内規程のたたき台をAIで作る」2026年2月公開)。ひな形を自社に合わせて直す作業が大変で、結局そのまま塩漬けになりがちです。
同記事は、AIに任せてよい範囲と、人や専門家が担うべき範囲を次のように線引きしています。
作業 | AIの活用 | 理由 |
|---|---|---|
章立て・全体構成の案出し | 向く | 一般的な型を素早く出せる |
条文文案のたたき台づくり | 向く | 議論の出発点を素早く用意できる |
自社制度に合わせた言い換え | 向く | 条件を伝えれば文体を調整できる |
法令適合の最終判断 | 向かない | 専門家の確認が必要 |
届け出る正式版の確定 | 向かない | 法的効力は人の責任で確定する |
就業規則って、AIに「作って」って言ったらポンと完成するものなんですか?
いやいや、そこは誤解されやすいとこやね。AIが作れるのはあくまで「たたき台」まで。仕上げと最終判断は人間の仕事やで。
たたき台だけでも、結構な時短になりそうですね。
そうそう。ゼロから半日かかってた作業が、条件を伝えるだけで数分で骨組みが出てくる。ここが一番おいしいとこやね。
属人化した業務マニュアルをAIで整備する話は、以前つむぎやのブログでも書きました。規程づくりも根っこは同じで、「誰かの頭の中にしかないルール」をAIの力で言語化していく作業です。
AIで就業規則はどこまで作れる?使うツールと書き方のコツ
使うツールによって得意分野は違います。まずは自社が使える範囲で、複数を使い分けるのが現実的です。
社労士事務所RESUSの記事(200社以上の就業規則類を作成してきた社労士による解説)では、文書作成に向いているツールを次のように整理しています。
ツール | 特徴 | 料金目安 |
|---|---|---|
日本語に強く自然な条文表現 | 月額20ドル程度 | |
長文処理・文脈保持に優れる | 月額20ドル程度 | |
検索連動、最新情報に強い | 月額2,900円 | |
Word・Excel連携が便利 | 月額3,000円〜 |
同記事のプロンプト例が分かりやすいので引用します。「従業員30名の介護事業所です。所定労働時間は1日8時間・週40時間、深夜勤務あり。フルリモート可、週2日上限/副業は事前届出制。就業規則の法定記載事項(労基法89条)を網羅し、ハラスメント対応も含めて第○章 第○条の見出し構成で整えてください」というように、業種・人数・制度の有無まで具体的に書き込むのがコツです。
私自身も先日、つむぎや社内向けのAI利用ルールのたたき台をClaudeに作らせてみました。「入力禁止情報」「許可するツール」「違反時の対応」の3項目だけ条件を伝えたら、10分もかからず章立てと条文案が返ってきて、正直かなり驚きました。もちろんそのまま使えるレベルではなく何ヶ所も直しましたが、白紙から書き始めるのとは疲労感がまるで違いました。
お金かかりそう…無料版じゃダメなんですか?
無料版でも下書きはできるけど、出力制限があったり、入力した情報がAIの学習に使われる可能性があったりするから、業務で使うなら有料プランがおすすめやで。
月2000〜3000円くらいなら、社労士さんに一から頼むよりずっと安いですね。
せやろ?たたき台を自分で用意できたら、専門家に払う分は「確認だけ」に絞れる。結果的にトータルの費用もぐっと下がるんやで。
社内ルールとして運用するには?入力禁止情報と懲戒の勘所
たたき台ができても、それだけでは会社は守れません。あわせて「AIを安全に使うための社内ルール」を整備し、周知しておく必要があります。
総務省「令和7年版情報通信白書」によると、生成AIを業務で使用している企業は55.2%(前年42.7%から大幅増)。一方でiTSCOM for Businessの調査ではガイドライン未整備の企業が約63%にのぼります(AI活用支援メディア0120.co.jpより)。使ってはいるがルールがない会社が多数派というのが実情です。
RESUS社労士事務所監修の記事では、AIに入力してはいけない情報として次を挙げています。
- 個人情報(氏名・住所・電話番号・メールなど)
- 顧客情報・クレーム内容・問い合わせ内容
- 契約書の全文、売上・給与・財務データ
- 社内機密(価格戦略・仕入先・技術情報)
- 社員の評価情報・人事情報
逆に、固有名詞を伏せた匿名化データや、数字を丸めた架空シナリオなら条件付きで入力してよいとされます。ここを明文化するだけでトラブルの大半は防げるそうです。
違反時の懲戒にも要件があります。就業規則に根拠規定があれば懲戒は可能ですが、それには「社内ルールが明文化されていること」「社員に周知していること」「経過・証拠・損害が明確であること」がそろって初めて成立するといいます。ルールを作らないまま懲戒すると、手続き不備で無効になるリスクがあります。AI利用規程は作って終わりではなく、社員に届くところまでがワンセットだと私は考えています。
国の指針も動いています。総務省・経済産業省は2025年3月28日に「AI事業者ガイドライン(第1.1版)」を公開し、社内ガイドライン策定の参考資料に位置づけています。日本ディープラーニング協会(JDLA)の「生成AIの利用ガイドライン」も無料で改変・利用できます。
専門家側の動きも参考になります。AI契約審査プラットフォーム「LegalForce」は自動レビュー機能を就業規則に対応させた後、賃金規程にも対応を開始したと発表しました(LegalOn Technologies、PR TIMES発表)。2023年12月時点で3,500社超が有償契約で利用しているとのことです。RESUS社会保険労務士事務所も、電気通信大学大学院の内海彰教授と共同でAI就業規則診断ツールの研究開発を進めています(2024年7月18日付お知らせ)。「作る」だけでなく「既存の規程をAIでチェックする」動きも広がっています。
まとめ:たたき台をAIに、判断は人に
就業規則や社内規程づくりは、手が回らず後回しになりがちな仕事でした。でも生成AIを使えば、一番しんどい第一稿を数分〜数十分で用意できます。空いた時間で人間がやるべきなのは、書式調整ではなく「自社に本当に必要なルールは何か」を考えることです。面倒な下書き作業をAIに渡した先にこそ、あなたにしかできない仕事があります。あなたの会社の得意なこと、本当に時間を使いたいことは何でしょうか。それを考える時間を取り戻すために、まずは規程のたたき台からAIに任せてみてください。
社内規程やAI利用ルールの整備を自社だけで進めるのが不安な方は、つむぎや株式会社にご相談ください。AIの基本操作から社内ルールの考え方まで学べる研修もご用意しています。